アトランティックトレードのロスカット遅延訴訟

アトランティックトレードのロスカット遅延訴訟

様々な規制により個人向けのFxサービスははじまった当初より格段に安全性を増しましたが、なおも他の資産運用の方法と比べて大きなリスクをはらむ投資方法です。特に高いレバレッジをかけたFxトレーダーの損失を限定するロスカットは、わずかな遅れが大きなトラブルを招き、場合によってはFX会社そのものの倒産を招くことがあります。今回は、ロスカットが遅れたことで裁判沙汰にまでなったアトランティックトレードの事例を見てみましょう。

ロスカット遅延訴訟の内容と判決

はじめに、この訴訟内容と判決について大まかに見てみましょう。
訴訟内容を見ると、トレーダーは証拠金8151万5940円、必要証拠金額は3630万1820円、預託証拠金額(純資産額)は907万5447円を保持していたところ、為替レートの変動により評価損が発生。評価額が7335万8000円、有効証拠金額が815万7940円で預託証拠金額(907万円)を大きく割り込み、ロスカット対象となったところ、FX会社のシステムにアクセスが集中したために、約定遅延(スリッページ)が発生。トレーダーの損出額は預託証拠金額を上回り1,000万円以上の不足金が生じたため、発生した損失分の回復を裁判所に訴えることとなりました。
判決ではロスカット処理が遅延したことはFX会社側の不手際であり、正しいロスカット処理がおこなわれたときの金額と遅延によって発生した損失の差額分を賠償するように命じる判決を下しました。(東京地方裁判所平成20年7月16日判決)

裁判で争われた3つの争点

この裁判は原告側勝訴でおわりましたが、実際の裁判では主にロスカットに関わる3つの争点について争われました。その内容を見てみましょう。

争点の内容争点1:FX会社はロスカット・ルールにより決済の義務を負うか

この取引ではレバレッジ100倍の取引を可能とするものであり、為替レートの変動によってはxに瞬時にして莫大(ばくだい)な損失を与える危険性を秘めていました。そのため、ロスカット・ルールは、裁判の対象となった取引で極めて重要な役割を担っていたと考えられます。更に、説明書などにはyがロスカット手続を取る旨の記載があるうえ、一般にロスカット手続の条件は、口座開設のときの重要な関心事とされます。
このことに照らせば、FX会社側がロスカットの手続きをおこなう必要があると考えられます。

争点2:ロスカット時の為替レートで反対売買を成立させる義務の存否

このようにFX会社側に期待されるロスカットですが、FX会社側が一方的に損をおわないための取引(カバー取引)は契約書などに記されている限りは許されると考えられます。

争点3:決済遅延による損害と免責約款

ここまでFX会社側にはロスカット手続きをおこなう必要があり、そのための取引は契約書などに書かれていれば認められるとしました。では、実際の取引でどこまで不手際が許されるのでしょうか。今回の訴えでは、通信・サーバーの不具合によりロスカット手続きが正常におこなわれなかったことが原因であり、システムそのものが不十分なものでした。そのため、認められると不手際の範ちゅうを超えているため、FX会社側にトレーダーの損失分を補填する義務があるという判決が下されました。

この判決がもたらした影響とは

この裁判のあと、FX会社の提供するサービス内容の見直しがおこなわれ、Fxトレーダー保護に関する規制として、ロスカット・ルールの徹底とレバレッジ上限25倍がもうけられました。
これにより、FXサービスはそれまで以上にトレーダー保護に力を入れることとなったのです。

おわりに

この裁判によってFX会社にトレーダー保護の施策が義務付けられましたが、その実行は資金面からもシステム面からも簡単なことではありません。
トレーダー側もむやみにハイレバレッジの取引をおこなわないなどの自衛策をとる必要があることは、言うまでもありません。