2010年5月7日:誤発注ショック

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誤発注の発生は洋の東西を問わず起きますが、世界の金融市場の中心であるアメリカで発生すると、どのような事態になるのでしょうか。
2010年5月にニューヨーク証券取引所で発生した1つの誤発注から、世界規模での金融市場の混乱へとつながった経緯をふりかえってみましょう。

P&G株の急落からはじまった株価の急落

この日のニューヨーク株式市場は、2009年のギリシャの政権交代により成立したパパンドレウ政権が明らかにしたギリシャ財政危機と世界経済への波及が懸念されて、朝方から大幅安で推移していました。午後2時半ごろ、1件の誤発注とそれに反応したプログラムの売りが一斉に発動、わずか10分間足らずという短時間で700ドル前後も下げる大暴落となりました。その後急速に株価は上昇、結局この日の終値は、前日比347.80ドル安(3.2%安)の1万520.32ドルで引け、始値と終値だけを見ると取引時間中のパニックがウソのような内容となりました。

きっかけとなった誤発注とアルゴリズムの追随で大きくなった混乱

後の調査では、誤発注を出したのはシティグループのトレーダーであり、本来ならP&G株の1600万株の売り注文を、160億株と誤って発注したことが原因とされました。原因こそ東京証券取引所で2005年に発生したジェイコム株大量誤発注事件と類似の事例ですが、アルゴリズム取引が追随したことでジェイコム株誤発注とは比べものにならない規模での暴落を記録することとなります。コンピュータによるアルゴリズム取引が主役となった2010年の暴落は、1987年に発生した「ブラックマンデー」を彷彿させるものであり、市場はパニック的な混乱におちいることとなりました。この当時よりも更にアルゴリズム取引が浸透した2016年になると、わずかな値動きを捉えてアルゴリズムが一秒間に数十回から数百回の取引をおこなう「高頻度取引(High frequency trading=HFT)」も活発も登場します。
このHFTが原因の株式市場や外国為替市場の急落は珍しいものではなくなっています。

外国為替市場にも波及した誤発注ショック

さて、たった一件の誤発注をきっかけとした株価の急落は、世界中の株式市場はもちろん、外国為替市場も巻き込んだ混乱を引き起こしました。日中の米ドル/日本円(USD/JPY)は1ドル=94円前後、ユーロ/日本円(EUR/JPY)も1ユーロ=120円前後と比較的安定して推移していました。しかし、ニューヨーク証券取引所の誤発注をきっかけとする急落は外国為替市場にも波及、ロンドン時間だった外国為替市場も暴落に巻きこまれることとなりました。

その日の高値と安値を見てみると、

  • 通貨:高値:安値
  • USD/JPY:93.97:87.95
  • EUR/JPY:120.48:110.49
  • GBP/JPY:141.88:130.02
  • AUD/JPY:85.81:77.04
  • NZD/JPY:68.31:62.79
  • CHF/JPY:83.60:79.81
  • CAD/JPY:91.05:83.53
  • ZAR/JPY:12.37:11.13

と、瞬間レベルでは「100年に1度」と言われるほどの急落を記録することとなりました。

ドル円はその後、日本銀行(日銀)の即日オペによる1兆円とも言われる規模での為替介入により急速に値を戻したものの、その後も15年ぶりとも言われた円高への対応に苦慮することとなりました。ここまで混乱が広まった理由は色々とあげられていますが、有力なものとしてはやはりギリシャの経済危機が明らかになったことによる金融市場全体での不安感が大きな要因としてあげられます。その後もギリシャは、たびたび世界経済のトラブル要因として悪い注目を集めています。

おわりに

たった一つの誤発注から世界規模での金融市場の混乱につながった2010年の誤発注ショックですが、その背景には金融システムへの不安が大きなものと言われています。
様々な施策により世界経済は強固なものとなりつつありますが、金融取引は人心に左右される以上、心理的な要因による急落は今後もあると考えるようにしましょう。