2009年10月31日:南アフリカランド円大暴落

2009年10月31日:南アフリカランド円大暴落_アイキャッチ

外国為替市場は人対人の取引である以上、誤発注や過剰な注文などによって大きく影響されることがあります。しかもグローバル化が進んでいるため、一人の手違いが世界中に及ぼす影響は小さなものではありません。
今回は、その中でももっとも顕著な例として知られる南アフリカランド/日本円(ZAR/JPY)の大暴落を見てみましょう。

くりっく365の誤発注がきっかけとなった南アフリカランドの暴落

2009年10月30日(金)、(正確には取引終了間際の10月31日(土)午前4時59分33秒)に、東京金融取引所の提供する取引所取引「くりっく365」で、南アフリカランド/日本円(ZAR/JPY)の為替レートが3円以上(26.8%)急落する暴落が発生しました。

店頭取引と比べて透明性の高い取引所取引であるくりっく365で、なぜこのような為替レートの急変が発生したのでしょうか。
その理由はいくつか考えられますが、主なものとして、

  • (現在も同じ仕組みだが)公設の取引所が運営する取引にも関わらず、わずか6社のマーケットメイカーによるレート供給であること
  • (現在は導入されている)直前の値と大きく乖離したレートは強制的に排除する機能がなかった
  • マーケットメイカーの1社が出したイレギュラーな約定を「マーケットメイカーが提示した価格で約定した取引所の正式なレート」として、そのままにしたこと

があげられています。

後日、東京証券取引所から救済措置として、異常な価格で約定した取引についてはその価格での反対売買をおこなうことと、ロスカット取引についてその価格での反対売買をおこなうことが発表されましたが、その対象は一部であったことから後に集団訴訟にまで発展する事態となりました。

異常な注文の約定が招いた大暴落

ではなぜ、このような南アフリカランドの大暴落が発生したのでしょうか。東証から後日発表されたところでは、マイナー通貨の流動性が急速に低下している状況下で、マーケットメイカーの1社が、極めて広いスプレッドのレート提示おこなったことが直接の原因とされています。くりっく365では店頭取引と異なり、参加するマーケットメイカーが提示する為替レートを合成してトレーダーに対してもっとも有利な売り気配・買い気配を提示しています。
しかし、マーケットメイカーはくりっく365で取り扱いのある通貨全てに対して常時レート提示をおこなっているわけではありません。そのため、1ランド=11円台で推移していたところに、8円というレートが提示・約定したことで、取引量の少ない南アランドの為替レートが引きずられたと発表されています。この暴落では、下げたのはトレーダーの売却価格である「ビット」に限られ、購入価格である「アスク」はそのまま推移していました。そのため、この暴落で安値で南アランドを仕込めたトレーダーはおらず、誰もが平等に損をしたとされています。

他の通貨にも波及した暴落の影響

この暴落により、ドル円や豪ドル円など複数通貨を保有する投資家のポジションのロスカットも誘発することとなり、大量の売り注文がマーケットに出され、一時的に円高進行となりました。だれとも知らない誤発注とその約定により、取引所だけではなく外国為替市場全体に大きな混乱を招くこととなったのです。

おわりに

このような誤発注をきっかけとする市場全体の歪みは、規模の大小を問わず日常的に発生していますが、この南アランドの誤発注はその影響が大きかったことなどから注目を集めました。
現在ではシステムや制度の改正によりこのようなトラブルは起きないと言われていますが、やはり想定外の事態に備えてある程度の安全策をとっておくことは欠かせなさそうです。